Dear Friends

DF 35  強盗の報い

2004年8月

親愛なる友よ、

短いが面白い休暇だった...

ケンブリッジ大学のフランシス・クリック教授が亡くなった。1962年にノーベル医学賞の3分の1を授賞した人物で、ジェイムス・ワトソン(アメリカ)およびモーリス・ウィルキンズ(ニュージーランド)と共に「核酸の分子構造および生体における情報伝達に対するその意義」の発見に対しての授賞だった。そう、DNAのことだ。

CBSのニュース(イギリスではスカイ・ニュース・チャンネルで7月30日午前0時55分に放映)では、教授の死についてこのように報道されていた: DNAの二重螺旋構造の解明は、原子爆弾の発明そしてアメリカ大陸の発見と同じほど重要なもので、これなしでは(画面はスーパーマーケットの店頭のカットに)遺伝子操作によって作られた、こんな美味しそうなトマトが店に並ぶこともあり得ませんでした。

それと...

死んだ17人の強盗

裁判記録

検察官

「被告人であるミスター・イアン・ギラン。この事件は17人の強盗の死体が、あなたの自宅の玄関のドアの内側で、ええ何と言うか、山積みの状態で発見されたというものですが。」

IG

「はい。」

検察官

「まずこの、尋常とは呼べない状況に至った経過を説明して下さい。」

IG

「急に誰かが侵入してきてビックリしたんです。僕がクロスワードパズルをやっているところへ、突然窓ガラスが割れたかと思ったら、拳銃を手にした男が数人飛び込んできて、『言うことを聞かないと撃ち殺すぞ!』と叫ぶんです。うちの猫もビックリしてテーブルの下に逃げ隠れ、僕はウィスキーをこぼしてしまいました。そうしている内に玄関のドアがバーン!と開けられて、さらに大勢の連中が殴り込んで来たんです。」

検察官

「その時ですね、えーっとこの質問に答える前にもう一度よく考えて当時の状況を思い出していただきたいんですが、ミスター・ギラン、その時あなたは恐怖を感じましたか。」

IG

「いや、恐怖という程では...予告なしにやって来る人はよくいるんですが、でもこの時はいつもと違うような感じがしました。恐怖というと強すぎるような気がしますが、ちょっと不安になったというか、いや、その人達の中に知ってる顔が見えなかったので。」

検察官

「ミスター・ギラン、あなたがこれほど圧倒的な、実に不要かつ不適応な暴力行為に出た、その理由を説明して下さいますか。その結果としてあなたは17人もの罪の無い人間を殺害してしまったのですが。」

IG

「それって誘導尋問っていうんじゃないんですか? その時起こったことを説明しますけれど。

最初に窓から何人か入って来た時、僕はどうしていいか全く分からなかったんです。でもその内の一人がナイフを手に、僕の方に超スピードで 突進して来て、そいつの目を見た瞬間、無意識に僕の身体が動いていたんです。」

検察官

「ということは、中断して申し訳ないんですが、ミスター・ギラン、それではあなたはその男の目を見ただけで、その人間が自分に何をしようとしているか分かったとおっしゃるのですか?」

IG

「いえ、それよりも彼が手に持っていたナイフの方だったと思います。」

検察官

「この出来事のどの時点かで、もしかしてこれは全て無害なジョークかもしれないと、この男の子達はみんなふざけて遊んでいるだけなんだという可能性は思い浮かばなかったのですか。」

IG

「ほんの短い間、それも考えました。でもその次の瞬間、そいつはナイフで斬りかかってきたんです。」

検察官(裁判長に向かって)

「裁判長殿、この、あー、罪のない人間を虐殺した被告がですね、実際には切り傷、擦り傷、打撲傷その他身体的な傷は一切受けていないという証拠写真を、これから見ていただきたいと思います。」

裁判長(陪審員達に向かって)

「今の検察官の言葉の、被告に関する部分は無視するように。」

検察官

「申し訳ございません、裁判長殿。(陪審員のいる方を向き、しばらくして被告に話しかける)。その男はナイフで斬りかかってきたと言いましたね。あなたの身体にはその証拠となる傷が全く見られなかったのですが。」

IG

「僕のコートを貫くだけで済んだんですが、それでも本気で僕を殺そうとしているのだということは分かりました。お互いナイフを取ろうと揉み合っている内に、もう一人の男が間に入って来て、そいつがガンを撃ち始めたかと思ったら誰かの叫び声が聞こえて、僕とその最初の男は床に転がりこんで、気が付いた時にはそいつ、もう全然動かないんですよ。

で、僕はその、胸にナイフが突き刺さった奴の上に乗っかっていて、周りにはもう一人の奴がめちゃくちゃに撃ったからでしょうけど、3人ぐらいの死体が転がっていて。撃った本人は喘息の発作が起こったみたいで、床でバタバタ暴れながら、吸入器の方を指差してるんです。

すぐに喘息だと気付けば良かったんですが、その時は気が動転していて、関節炎とてんかんが持病の奴だと思い込んじゃったんですね。それでキッチンに行ってスプーンか何か、とにかく彼の口に突っ込んで窒息を防ぐための物を取ってこなくちゃとしか考えなかった訳です。」

検察官

「その男性の身体の具合が気になったのですか。」

IG

「勿論です、どこか悪いのは明らかでしたし。」

検察官

「それで、それからどうなったのですか。」

IG

「急に照明が消えて...ちょうどその前に玄関から何人もが侵入してきたところだったというのもあって、取りあえずその現場は離れて玄関の方に出ていってみました。」

検察官

「どちらに何人ぐらいいたか、その時点で分かっていましたか。」

IG

「窓から入って来たのが10人で、玄関から入って来たのが7人でしょう?」

検察官

「何故その点について確証できるのですか?」

IG

「窓から10人入って来たのは見て数えていたから...死体は17個あったんでしょう? 計算すればいいだけのことじゃないですか。」

検察官

「ミスター・ギラン、山積みになった死体の内、下の方の7人、つまりは玄関から入ってきた7人は、全員頭蓋骨を打ち砕かれており、その損傷はあなたがいつも玄関に置いてある野球バットと似た物体によって生じられたものだという法医学的証拠があるのですが。」

IG

「それはまあ辻褄が合いますね。」

検察官

「いつも玄関のドアの側に野球バットを置いていることは認めるんですね?」

IG

「いえ、野球バットはいつもグローブとボールの側に置いてるんです。全部まとめて。記念品としてもらったセットなもんで。」

検察官

「で、この時あなたはボールでもなくグローブでもなく、バットを手にしたんですね?」

IG

「本能的な反応だったんだと思います。バットを振り回して、襲い掛かってくる連中から身を守ろうと。何が適当な武器か、ほんの一瞬考えましたが、ボールやグローブの案はすぐに捨てました。」

検察官

「その最初の襲撃の後、生き残った五人ですが。」

IG

「どうやら彼等は逃走しようと、倒れている仲間を引きずって廊下に出てきたようです。外に彼等の車が2台停まっていて、今でもまだ駐車したままなんですが、ボルボ240GLステーション・ワゴンと、ロンドンのタクシーです。どちらも小回りの効く車だってのは知ってますが、あんな狭いところによく2台も駐車できたなと今でも不思議です。それはともかく、その車で逃げようと、とりあえず仲間を玄関まで引きずってきたんだと思います。そしてそこで悲劇が起こったんです。」

検察官

「ミスター・ギラン、この時点では既に12もの死体が山積みになってる状態です。全員罪もなく殺された人達ばかりです。ここで更にまた新たな悲劇が偶然起こったのだと、あなたとは関係のない悲劇が起こったのだと、信じろと言うんですね?」

IG

「はい...いえ、僕も関わってはいたことになりますよね。こんな結果になるとは、こんな酷い事をするつもりじゃなかったのにと思って、それでちょっと休戦宣告をしたんです。」

検察官

「休戦宣告ですか?」

IG

「はい、『君たちの仲間をちょっと酷い目に合わせちゃってごめん。悪意はなかったんだよ。すぐに飲み物を用意するから、ちょっと座って待ってて、ほら、そこで山になってる連中の上にでも。』って。」

検察官

「飲み物?」

IG

「以前マイケル・ジャクソンにも作ってあげた特製カクテルなんです。ベースはアドヴォカートで、そこへウォッカとウィスキーとドランブイ[注1] とストレーガ[注2] を適当に入れて、レモネードかクリームソーダのどっちかを加え(どっちを使ったか忘れてしまったんですが)、更にチェリーブランディをほんの一滴と、ポートワインとテキーラとメスカール[注3] とアブサンを入れた、とても飲みやすいフロートなんです。」

裁判長

「有罪の判決を与える。5年の実刑。すぐに連れていけ。」

訳者注:
[1] スコットランドの甘いウィスキー・リキュール
[2] イタリアの甘いオレンジ味リキュール
[3] メキシコの強い蒸留酒で、メスカリンの原料となるサボテンから造られたものなので、大量に飲むと同じように幻覚作用がある。

いやはや、喫煙がどんな災難を巻き起こすかのいい例だが、検察側の手続きに不順があったため、幸いにも罪を逃れることができて、ツアーは予定通りに行われる。

英国の司法制度のお陰で当サイトの Anecdotage セクションにまた1ページ増えた。女性からの究極の酷評に関するちょっとしたエピソード(数年前ペイシーの自宅での実話)も追加したところだ。

それじゃツアーで会おう。

Cheers

Ian Gillan

Copyright © Ian Gillan 2004

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