Dear Friends

DF 31 率直なところ、バナナ(クレイジー)な話

2003年7月

親愛なる友よ、

フロントページのハンサムな野郎はパーティー用にドレスアップした当サイトの編集者、スティーヴ・キャンベルだ。ピンボケなのは、バカチョンのデジカメがマクロ設定になっているのに気付かなかった僕のせいだが、まあそんなに大したことじゃないだろう(DF 26参照)。

僕はこのビジネスに入りたてホヤホヤの頃から、ヨーロッパのあちこちを回ってきた。ロジャー・グローヴァーと一緒にエピソード・シックスで歌っていた頃は、ケルン、フランクルフト、ミュンヘンで週7日、土日を除いて毎晩公演し、マチネーも含めて週に全部で8公演したことも...今から考えるとすごい。その後ディープ・パープルやその他のバンドで、ヨーロッパ大陸の大きな街のあれこれをたくさん回った。もちろんその他の大陸(人が住んでいる部分)も、人里離れた素晴らしい場所をも色々訪れた。

ヨーロッパの諸国で友達ができて、ビールや体罰について、音楽、政治そしてスポーツについて語り合い、あれやらこれやらについて、哲学的な論議を延々と交わしあった。おパリは8区、ル・ド・ラ・ビアンフェソンスで1年暮らしたこともあり、その間に何とか通じるけどかなり恥ずかしいフラングレーズ(英語の混じった怪しいフランス語)も習得した。

デンマークの楽屋ではクシを噛み、スペインでは大きな黒牛と楽屋をシェアした(ような気がする)。モデナではルーシーと、ローマではクリッシーと一緒に歌い、レミーとパーティーしたのは...ええっと、どこだったか覚えてないや。ポルトガルではリスボンからファロまで(ソウル経由で)足を延ばして、休暇をとった。アルボンヌでは早朝の襲撃に成功、ストックホルムからナルヴィックへの道程ではバスのフロントガラスにヘラジカが突っ込んできた...といった調子。

今回の話を持っていきたいのは、この多様さたっぷりの素晴らしきヨーロッパについてだ。

そんなに昔の話じゃないが(あれ、つい最近のことかな?)我らの親愛なるマネジャーがツアーマネジャー(その名もスパイダー)に足首を噛まれるという事件があった。このクモはオーストラリアからバナナを運ぶ船に乗ってイタリアまでやって来たため、EUに輸入するための条件を満たす果物だという証明に必要な書類を所持せずに入国したことになる。いったいどうしてこんなことが起こり得たのか?

今やこの「大バカ連合」(でしかない)では全ての事項が「細ひげ官僚 (Wispy-Mousatchioed Bureaucrat、以下WMB)」が下す指示に従わなくてはならず、奴らが僕達の希望にまったく沿わない仕事をしてくれているのみならず、その事務課だけでも、年に少なくともおよそ2兆ポンド、そう、2,000,000,000ポンド(約400兆円)もの金をなくし、そう紛失し「説明できません」とぬかし、ハウンスロウ流に言うならトイレに流している...(という話だ。)

侵略を決めた超大国(僕だ)は、ブリュッセルおよびロンドン、ベルリン、ローマ、マドリッドといった地方の兵站部にWMBが集結されているのは僕の理知的、倫理的および物理的安全に対する差し迫った脅威だと理解する。僕の自由も忘れないで欲しい。

わが広報部の高官より、僕の懸念を裏付ける極秘情報が入ってきたところだ。それによるとこれらのWMBは現在のEU地域および今後EUに参加する予定の地域内すべての場所を、指令が下されてから45分以内に、おそらくはそれよりもっと早く、手当りしだい攻撃することができるとのことだ。

この馬鹿げた体制の中で、WMB達はバナナ(気が狂っているの意)そのものだ。そう、細ひげ官僚とバナナは逆説的だがどちらも凶器であり同時にかつ合法的に許される気狂いであるという点において、同一のものだと見ていい。

空から何千ものバナナが頭上に降ってくるのを想像してみてくれ。そして赤テープで縛り付けられ、動けなくなっただけでも充分ひどいだろうが、更にその後よく観察してみると、どれも灰色でヌルヌル、種がなくて繁殖不能、味もほとんどまったく無しだと気付いたら...それこそまさにWMB、同時にバナナだ! 降伏の屈辱も倍増するだろう。デン・ハーグ(欧州最高裁判所)に訴えても無駄だ。奴らは裏で組んでいて、法も体制の一部でしかない。

抵抗運動は困難だ。利に適ったことを一言でも口にするなり、キャベンディッシュ[注1] 支援団体が立ち上がり、ひそひそ声の噂が次第に広まり、君がヨーロッパ差別者、外人差別者、バナナ斑点病差別者、果物差別者、そして(密かに)官僚主義差別者だと批難されるまで、そう時間はかからないだろう。そして偏見と言う許し難き大罪の濡れ衣を着せられるのは避けられない。そう、偏見を禁止する条例も近々定められるようだ。(よーく考えるとおかしな話だ。奴らがみんなを同じにしてしまおうとする一方で、僕達がその単調でみな同じな民族の一部をとって批判することや冗談を言うことは法に違反するなんて。)

そして指差しで軽蔑され批難された上に、結審がまだ出ぬ内から、今度はメディアでの袋叩きに会い、文字どおり足枷をはめられる。法の場に出て身の潔白を証明するための道程はまだまだ遠い中、この先の運命がいかに暗いものか、目に見えてくる。

という訳でWMBは致死的な破壊力を持ちつつも合法であり、また保護された種であることは、批評の余地がない。だが公平な目で見てみよう。彼等は我々の住む社会に利用され、虐待されているのではないのか? 一体どれだけの数が口もつけずに、熟れすぎたり、乾いてしなびた状態で捨てられてしまうのだろうか?

WMB達のことだ、きっとこの状況を避けるために、自分達を買ったその場で食べてもらうように新しい規則を考案している最中に違いない。肥満を防止してみんなの健康を促すためと言って、緻密な計算によって一人あたりの消費量をはじき出し、僕達のカリウム摂取量は法的に定められ、各地の病院および区役所によって監視される。。違反者は更生のため、国際バナナ・プランテーン改良ネットワーク(INIBAP・本当に存在する)に送り込まれる。

以下はバナナに関しての馬鹿馬鹿しく、また恐ろしく強制的なEU条例からの抜粋だ。

3.サイズの分類方法
サイズは以下の事項によって定められる。

・果実の食用に適する部分の長さ( 凸状の側面を、花の側から果柄の基部までを測定した値をセンチメートルで表記したもの)

・等級、すなわち果実の側面の表面部と中心部との、長さの軸に対して垂直にあたる横断線の厚さを測定し、ミリメートルで表記したもの

長さおよび等級の測定に用いる参照果実は

・果手の最も外側に面した列の中央の果指

・房の最も外側に面した果手の切断面に隣接した果指

許容される最低の長さは14センチメートル、また許容される最低の等級は27ミリメートルである。

僕達が次から次へと押し付けられる理解不可能な、ゴミのような規則の、これはほんの一部にしかすぎない。その量と頻度は増すばかりだ。あれ、曲った部分の話をするの忘れてたっけ? これはこれは失礼...バナナの曲線を規制する条項があるんだ。どの等級のバナナも、規定に沿った方法で測定され、許容範囲でなければならないと、大変詳しく書いたものが。そんなこと言われなくても果物商人ならちゃんと自分でできる仕事だってのに、こんな下らないことに我々の税金を無駄遣いしているこの大バカな体制に腹が立たないか? ちゃんと答えてくれ、さもないと君を規定する条例を作ってやるぞ!

何にせよ、ディープ・パープルの新アルバムのジャケットに写っているバナナの内どれ一本としてEUへの輸入が許されなかったであろう。さて、僕達の周りでいったい何が起ころうとしているのだろう?

遺伝子組み換え食品は既に我々の食卓に入り込んで来ている。バナナにはその点についての注意書きなんて付いてこないだろう? 貼ってあるのは生産者の銘柄のシールのみ。いや、これもちゃんとチェックする価値あり...チキータ・バナナか...う〜ん、美味しそうな名前!

遺伝子操作の支配者達はアフリカその他の貧しい国を援助したいのだそうだ。が、既に世界中で食料が余剰の状態な上に、噴霧器や繁殖力のない種子にかかる追加のコストは、これらの貧しい人達の負債を増やし、その結果として敵にますます恩を借りることになるだけだ。そう、そろそろ「敵」という言葉を使う時期がやってきた。

ジンバブエを見るがいい。かつて「アフリカの胃袋」と誉め称えられたこの国だが、(外部の助けで「自国から救ってもらった」り「解放してもらった」他の諸国とはまったく逆に)驚く程の無関心・無干渉のお陰で、今では経済的に破綻した、貧しい一国と化してしまった。それこそ繁殖力のない種子を増やすにはピッタリの肥えた土地、永遠に負債から抜け出すことは出来ないだろう。有機農業および従来の方法で栽培されてきた作物はやがて撲滅し、選択の余地は永遠に消えてしまう。カナダで起こっていることを見れば分る。が、ライセンス料さえ払えば、我々みんなが救われるんだ...

本当に本当なのか? アメリカで遺伝子組み換え作物を栽培中の農場400箇所を調査した結果、収穫は以前からまったく上がらず、作物の栄養価もまったく上がらず、噴霧された殺虫剤の量もまったく減っていないそうだ。そうだとしたら、まだ実験段階にあり、予見の限り逆行が不可能な上に大変な損害を招く恐れのあるこの危険な事業を促進しようとする唯一の理由は、それによって得られる利益だろうという結論しか出ない。(いや、この社会の中で生ずる利益の全てが悪いと言ってるんじゃないよ。)奴らを何とか止めさせなくてはいけない。これに反対する政治家なら、どの政党でもいい、僕は一票を入れよう。

カナダの全国農業連合の会長、スチュワート・ウェルズによると、期待されていた収穫高の増加およびコストの削減は実現していないとのことで、「賞賛を浴びたこの科学革命が唯一もたらしたものは、支出の増加、汚染の心配(農場間の境界線は、鳥やハチには通用しない)、そして最も深刻なのは今日の我々の食品生産に使われるべきではない、有毒度の高い化学物質が再度使用されるようになったこと」だそうだ。

イギリスの遺伝子操作科学調査委員会の顔ぶれには、モンサントやシンジェンタといったバイテクの大手会社に雇われた科学者がズラッと並んでいる。なんと信じられないことに、よりによってモンサント社のアンドリュー・コックバーン博士が、委員会の報告書の第一稿をまとめるよう委任された時点で、委員会の数少ない独立派の一人、ニューカッスル大学の環境農業学の教授であるカルロ・リーファート博士は辞任を決意した。(その気持ちはよく分る。)そんな報告書だ、遺伝子組み換え農業に対し、イギリスのドアは広く開いている。

先頭に立ってフランケンシュタイン作物を栽培した国、カナダのスチュワート・ウェルズは、我々は気が狂ってるとしか考えられないと言っている。

この問題があちこちで話題となり、人民を困惑させようと反復攻撃に拍車がかかった結果、我々は(いつものように)ただただ当惑するのみだろう。それによって利益を得られる連中が輸入禁止や経済的制裁をほのめかし、最終的にこの不味い材料のゴッタ煮を無理矢理食わされるのは我々、誰かさんは大儲け。

それはともかく...ヨーロッパに戻るとして...

考えただけでもおぞましい、無責任な社会工学者の連中(そうだよ、それ以外の何者でもない。)

ビールとビーチタオルという大変重要な事項に関してイタリアとドイツがハンドバッグを振り回しての大喧嘩を続けている(大笑いだ)。それを眺めるWMB達が、みんなのためにもこの件に関する条例を作るべきじゃないかと、興奮しているのは目に見える(細ひげがはね上がってカイゼルひげになる程。)だがソーセージ問題の詳細や、意見の分かれているワインの件(あれは待ち遠しい)、そしてCDD(Cheese Definition Department チーズ定義課)が直面している問題(「チェダー=地名」、「フェタ=形状」など)と、その前に片付けてしまわないといけない仕事はたくさんある。いや、別にそれが片付くのを待たなくとも、噂では「ヨーロッパの人口統計学的安定を侵食する恐れのある文化的料理習慣に関する広報部」(これは僕が勝手に作り上げたもの)が早速この件に関しての調査に着手の上、近日中に規定標準が定められますので、どうぞご心配なくとのことだ。

我々が幸福でいられるのに必要なのは、ここは自分の土地、自分の文化だという馴染みと帰属意識、そして自分自身のの目的意識であって、規則なんかじゃない。ましてや禁止令なんかじゃ絶対ない。何かを禁止して上手くいったことなんて、これまで一度もない。みんなお互いに敬意を払うようにすればいいんだ。フランス流に言うところの「ヴィヴ・ラ・ディファランス(違いに万歳)」だ。

1971年、イギリスの通貨が十進法に変わった際、どこの小売店も値段の端数を切り上げた。お陰で当時やっと戦後復興計画も終わり、普通の生活に戻りつつあったイギリスの大衆は、ここでインフレという単語を再発見することになる。ワオ!こんなに景気が良いのは初めて...と思ったら、おっとっと。

ユーロが導入されて以来の物価も同じようなパターンを辿っただろう? 何でも以前よりずっと高くなった。予想通りにね。

アメリカの各州の間のように、お互い政治的かつ文化的に切っても切れない関係にあるという場合でしか、統一通貨は意味を成さない。ヨーロッパじゃ難しい理由は実にこの点。ハウンスロウ流に言うところの「違いに万歳、文句言わせねえぞ」だ。

とは言ってもねえ...

Cheers,
Ian Gillan

Copyright (c) Ian Gillan 2003

バナナに関する付記:

ロシアのサーカス団の綱渡り師も、イギリスで公演の際は固い帽子を着用するよう、この国の保健衛生局によって定められている。ヨーロッパではイギリスだけだ。

イギリス人は狂犬と比較されるだけあり、我が国ではこんなおかしなことが毎日のように起こっている。

最近行われたアンケート調査によると、ヨーロッパ中でイギリス人が一番不正直なんだそうだ。全ての面において。ただしアンケートに対する答えに関してだけは、イギリス人が一番几帳面かつ正直に書いた...(という話だ。)

訳者注:
[1] 日本およびヨーロッパで最もポピュラーなバナナの品種

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